
東京都社会保険労務士会のWEBサイトに、古来からある精神性と働き方やキャリアについて取材された記事が掲載されています。取材を主に担当させて頂きました。このページの記事は、上記の引用記事からの発想や考察を自由に記載するもので、完全に筆者の私見となります。
―――現在、コロナ禍の中で企業においては急速にリモートワークが進んでいます。業務上、意外に可能な仕事が多いという感想もある一方で、孤立感を深めたりする方もいるようです。神社や神道の視点から何かご示唆頂くことはありますでしょうか。
浅山(神社本庁総合研究所所長)
神道では古来「人が集まる場に神が宿る」とされてきました。
神道というのは何か特定の思想があってそれを布教するという宗教ではありません。そうではなく、人々の集まる場には、何か気高いものが宿る、神が降臨される、それを自然に皆でお祀りし、お社/神社を建てる。これらが神道の一つのあり方であり、日本人の信仰の自然なあり方なのです。
東京都社労士会 HR NEWS TOPICS
「神社本庁に聞く ~時代の激変の中で 千年を遥かに超え続く「神道」と「神社」 人と組織の知恵」より
働き方や生き方の変化の中で「働く場」「人が集まる場」の意味が見えにくくなっている
現在、リモートワークが広がっていること、複業化で一部の業務のみ行う人の増大などの中で「働く場」をどう見ればよいのか、という論点があります。
・場所に関係なく生産活動のみ行うことができれば十分に事業は成り立つので、働く場は関係ない
・働く場所を強制的に限定する(出社を義務とする)考え方が効率性を削いできた
・とはいえ一体的な働く場がないと「何かが欠けている」感じがするので出社させたい
様々な声があります。
働く場所ということについての見解が定めにくい状況が続いていると思います。
これは、企業が基本的に自らの活動、企業活動というものを人事管理の面では「業務を行うこと」だと定義しているためだと思います。そのため、やり取りができれば通信でも構いませんし、業務がこなせれば場所に関係はない、という事になります。
しかし、業務を行うこと、仕事をするというのは「人が関わりながら、人生の一部の時と場を使って行うこと」であり、濃密な人との関りが発生します。
人間が自分の心身を使って行う、人と共に行う行為なのです。
古来から、人は、多くの人と共に行う行為や、自分ひとりで行う大切な行為に様々な意味づけを行ってきました。
それが文化や習俗など、太古の世界観の基礎になってきました。変化の時代で答えが導けないことに対しては、近代以前の感性にまで遡って捉えることが有効ではないかと思います。

「人の集まるところに聖なるものが宿る」考え方と感性
伝統的な思想や文化や習俗では「人が集まる場」が重視される
冒頭の、神社本庁取材記事の神道における「人の集まる場」には神が降臨する、ということは、聖なる空間だと思われる場所や、聖なる時間だと思われる時間に自然に生まれた崇拝感情、畏れの感覚をそのままに形にするということが基盤になっているものだと思います。
冒頭の引用においては「人が集まる場に神が宿る」ということが言われています。これは、意味を追っていくと2つの部分に分かれ、「人の集まる」ということの重要性と「場」の重要性、ということだと思います。
「人が集まるところに神が宿る」という考え方は神道をはじめ古来からのシャーマニズムによく見られる考え方であり、たとえば古くは日本神話における「天岩戸開き」の場面などは、典型的で原点的なコミュニケーション自体の持つ意義が象徴される場面だと思います。太陽神が隠れた時に、人々が集い楽しんだところ、神が現れ光が戻ったという場面です。このような、人が集まるところに奇跡が起きる、歴史が始まる、物語が生ずる、というのはあらゆる文化や精神思想において見られる感性であると思います。
もう一つが「場所」の重要性です。ある場所が神聖な場所であるかどうか、ということは任意に決定できるものではなく、見出していくものである、ということは日本神話にも見られる考え方です。

投稿者プロフィール

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公認心理師・社労士・組織文化&心理研究者
深層心理学・文化人類学・宗教学などで明らかになる「太古の知恵」を実践的に、経営やキャリア構築に繋げる研究と発信をしています。
変化を増す社会が、人間本来の感性を大切にするものであって欲しい。
「易」の研究を30年以上行っていてライフワークにしています。
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フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所 代表
㈱リクルート 経営管理部リーダーを経て独立、東京都社会保険労務士会役員、産業ソーシャルワーカー協会 所属専門家等。WEBエンジニア・メディアデザイナーでもある。
名古屋大学法学部卒業、武蔵野大学大学院 人間学部にて心理学・宗教学等を研究中





